★☆斬 ~ZAN~    ★ 第一章  闇の面影 ☆★

この世は、諸行無常。
さながら人間たちは羊の皮をかぶった狼同然。

「このオレは?どうなんだ?」
ふっと、自嘲気味に嗤い、ここ新宿歌舞伎町に潜むただならぬ妖気を感じて、公園の前で足を止めた。
四角いブルーシートの群れが、歌舞伎町のそれとはまったくの異世界への扉を開こうとしている。


ボス?・・・・・ボス!!」
声の出処に、ゆっくりと振り返る。
俺は、急に一人きりの世界から現実に引き戻された。
「なんだ屋良・・・。いきなり、こんなところでボスなんて言うな!!」
光一が、精一杯、声をおさえて、こう言うと屋良は、ちょっと複雑な面持ちで
「大丈夫ですか?ボ・・・あ!・・・・光一さん!顔色悪いっすよ?」
と言うと、おもむろに黒いダウンジャケットのポケットから携帯電話を取り出すと「もしもし?」と誰かに電話をし始める。
屋良の声は、あとかたもなく喧騒にかき消され相当に酔いの回った俺には、ただただすべてが虚ろに見える。

春は近い。
とはいえ、まだ3月初旬の新宿も肌寒く。白い息を飛ばしながら、歌舞伎町を行き交う、客引きたちの姿は、ますますもって寒さを倍増させている。
「光一さん?もう帰りましょうよ。今日は、かなり飲みすぎですよ?」
光一は、「そうだっけ?」と自分と同じくらいの背丈の屋良に向かい首をかしげる。
「なぁ。頼むから、あと一軒だけ!!!」
すると、屋良は「もう!ダメです!!さっき、長瀬に電話したもんで、そろそろ奴が飛んできますって!!」


俺の名は、堂本光一
「一番光る」なんて俺の親は、名付けたれど、今の俺を知ったら「名を返上しろ!!」と烈火のごとく叱られるに違いあるまい。
ここ新宿歌舞伎町で生き抜いている奴は、ほとんどが親にいえないような仕事をしているといえる。
生憎・・・・・・この俺も、同じ穴の狢っていうわけだ。
そして、さっきから、そんな俺の世話を焼いている男。
屋良は、俺にとって、その手の組織の人間といえる。

・・・・とそこへ大爆音とともに現れた第三の男。
ハーレーを駆ってやってきた長身で、ひげを短かめに伸ばしたワイルドな男こそ俺の相棒である長瀬・・・。
「よ!!相棒!!!」手をひんらひんらさせると、ワイルド野郎に大声で、「乗れ!!」と促された。
ハーレーのサイドカーに乗り込むと屋良にむかい、「じゃぁあ!!!」と手を振った。
俺を乗せた長瀬のハーレーデビットソンは疾風のごとく「眠らない街」を後にした。






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