★☆斬 ~ZAN~ ★第七章  龍神波動念剣  ☆★

光一は変わらず、お年寄りとのふれあいを大切にして時を過ごしている。

車椅子の、可愛いお婆ちゃんに「あたしが、もっともっと若かったらねぇ」なんて言われると「またまたぁ!桜ばぁちゃんの、お相手なんて百年早いですよー!」と微笑んだ。

田口は、そんな光景を微笑ましくも横目に見つめつつ、どっさりと洗濯物を両手に抱えてベランダへと歩いていた。
そこへ、亀梨くんと中丸くんが飛んできて「田口さん!僕らも、お手伝いします!」と志願。
田中くんと上田くんは台所で洗い物を黙々とこなしていた。
なんとも働き者のボランティア達!!

それもその筈、田口は、まとまらない、このやんちゃ坊主達に手を焼いて、たまらず理事長に相談した。そこで、光一から秘策(?)を伝授されたまで。


翌日、ボランティアと、ミーティングを開く直前。
「おほん!」・・・・と、かなり得意気な素振りでスタッフである田口から、こんな話が報告された。
「実は理事長からのたっての、お願いがある。この通り理事長はお忙しい方なので私、田口が代わって話させてもらう。来年度、君たちが卒業して他に就職などが決まっていないならば是非、ここ堂本老人介護施設の職員として働いていただきたいとの事だ」

やんちゃ坊主たちの目が一瞬できらきら輝きだす。
「まじっすか!?」
4人は皆、もう内定されたかのように喜びの雄たけびをあげていた。

「しかぁし!」
田口が厳しい声を発した。「ここで働いてもらう以上は、今はボランティアかもしれないが俺はこの目で、ずっとお前たちのことを見届けさせてもらうから、そのつもりで!」
その言葉にボラメンバーである一同は、すっかり、改心した・・・・・。

「奇跡だ・・・・・」この彼らの変貌振り。田口は思わず涙ぐみ改めて理事長の素晴らしさを肌身に感じていた。




「先日は、事情があり、ゆっくりとお話が出来ずに申し訳ありませんでした。」
光一は、そういって、深々と頭を下げた。
すると、目をくりくりさせた新米刑事の剛が「いえいえ・・・お忙しい中、なんか、すみません」と頭を何度も下げて、ソファに静かに腰をおろした。

そこへ、毎日が楽しくて仕方がないというスタッフの田口が軽くドアをノックして「失礼いたします。」と入ってきた。
すらりと伸びた華奢な腕からカチャリと音を立てながら、コーヒーが運ばれてゆく・・・・・・。
すぐさま、用事を終えるとまた「失礼いたしました。どうぞ、ごゆっくり」と恭しく頭を下げて、退室。

二人きりになると、すぐさま他愛もない、話に終始した。


光一には、秘密があった。堂本家とは、そもそも織田信長の代々家臣という由緒ある家柄。
もっと詳しく言えば、世に言うスパイ・・・隠密のような存在。
しかし、これを知っているものは、唯一の身内である叔父以外いなかった。
このことが、光一の心を悩ます原因でもあった。
しかし、剛と話を進めるに、まったく血統が違うということが明らかになった。
光一は、すーーーっと気持ちが一気に軽くなる。
実は、2人の出会いは、偶然ではなかった。剛の昇進は、ひとつには、このことを確認するが為のものであった。


「龍神波動念剣」

「妖刀の真の担い手は、やはり、俺なのか?」
光一は、セミダブルに仰向けにどっかと、身体を倒れこませて、そのまま深い眠りについた。


先祖代々から、受け継がれてきた、この妖しげな鈍い光を放つ刀。しかし、この刀はいったい、今まで何人の生き血を呑み込んだのであろう。
戦乱の世にあり、幾たびかの【戦】を経て、しのぎを削ったであろうに、刃こぼれが微塵もないのである。

真の持ち主を「龍神の意思」で決められるという曰くつきの妖刀・・・。
それが現在、光一の元にある「龍神波動念剣」だった。



山下智久。彼は、日本大手企業である山下グループの二代目社長として君臨している。


堂本光一・・・・山下がこの男の存在を知ったのは父親が半年前に肺がんで死んでしまったとき。
父親は悪友の勧めでヤクの密売に手を染めた。みるみるうちにあぶく銭が入ってくる。
その資金を元手に不動産も軌道にのせていった。そして、不動産で土地ころがしをしていく中でヤミ金にも手を染めていったのだという。
そんな父親には、気になる存在がいた。

こちらの世界では「鬼の堂本」と、恐れられる、ヤミ金業では、かなり、やり手の男がいた。
鬼の堂本は、その名のごとく金の取立てが鬼のように半端なく恐ろしいというのだが、なぜか年寄りにだけは優しいという。
それゆえ、年寄りの債務者からは逆に「仏の堂本」と親しまれていた。

「鬼の堂本」の存在は、父親にとって当然、面白くはない。
父親は堂本を亡き者とする、計画を企てていた。
時を同じくして・・・光一の父親は危険を察知し、身を隠すためにホームレスとして、あらゆる土地を点々とする生活を始めたのである。



「マーチン!!」せかすように、主に呼ばれ、隣の部屋から、すっと現れた青年。
にこっと微笑みかけると「どうなさいましたか?」と尋ねる。


マーチンと呼ばれた、その男は髪の毛の色こそ今風にちょっと染めてはいるが生粋のジャパニーズ。
山下がつけた愛称だが、名は町田という・・・・。
マーチンは、天涯孤独だったという。両親の素性さえ知れない。
そんなマーチンの過去が、まるでドラマみたいだと面白がり、周りの意見も聞かずに彼を山下は秘書兼ボディガードに抜擢した。


山下は、マーチンに例の「ガサ入れ」の全貌を聞くために、警察に確認をとるよう動いてくれと依頼した。
「了解しました」
マーチンは、颯爽と部屋を後にした。
そして、数分も立たないうちに「毎度有難うございます!米花生花店です!」と爽やかに入ってきた男。

彼は、慣れた手つきで、鉢植ひとつひとつの状態を見て、栄養剤を注入したり丁寧に仕事をしていった。


米花が、社長室に入る前。
マーチンは、紺色のスラックスのポケットから何やら青く四角い小さな物を落とした。
すかさず、米花は、さっと拾いあげると彼に差し出す瞬間、あるものと、それを素早くすり替えた。

マーチンは「ありがとう」とだけ言って、エレベーターホールめがけて足早に去ってゆく。
こうして、米花は、何事もなかったかのように、いつもの【仕事】に取り掛かった。


マーチンは、ただのボタンを手に、ぎゅっと握り締めた。
「もう少しです・・・ボス・・・」心の中で、何度も呟きながら・・・・。


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