★☆斬 ~ZAN~ ★第六章  黒幕  ☆★

田口の剣幕に、大体の見当がついた光一は、ある程度、愚痴を訊いてやり、おもむろに彼の耳元に手をやり、ささやきだした。

すると、田口の表情が、みるみる輝きを帯び始めた。
首を何度も縦に振ると、早速、自分を苦しめるボランティアの元へと駆け出した。

「おいおい!廊下を走るのは厳禁だぞ!!」

光一は、自室に戻ると、そのままソファに座り込む。

「やれやれ・・・。」
光一は、スタッフである田口の大変さなどは、百も承知である。
ましてや、理事長とは実は名ばかりで本業よりも、「闇社会の顔」のほうに、比重を置いているものだから。
当然。その、とばっちりとして、まだまだ若いのにもかかわらず、田口一人に、施設内の一切を任せっぱなしだったのだから。

「どうしたものか・・・・。」
そんな、田口には、自分の不甲斐なさを深く心で、詫びていた。


しばし、ゆっくりと目を閉じる。
そうして、静かに目を開き、ジャケットの胸ポケットから携帯を取り出した。



「先ほどは・・・。えぇ。有難うございました。はい・・・はい。」
電話の相手は、目上とわかるが、光一は親しげに話していた。
暖房が、ほどよく効いた部屋の居心地の良さは、電話の相手が身内ということも手伝ってのことであろう。

「おじさん・・・・それから。先日の堂本剛という刑事さんのことですが・・・」
ガサ入れの件で、光一は、剛とろくに話も出来ないままいたことを悔いていた。


警察は一つの大きなヤマにさしかかると、カモフラージュするために小さなガサ入れをすることが、よく使われる手段。「屋良っしゃい」も、まんまと、その餌食になるところだったのだ。
もちろん。警察と大きな関わりを持つ長瀬は、一役買っていた。

その大きなヤマこそ、光一にとって宿敵となる相手を探し出す千載一遇のチャンス。
係長である叔父は、黒幕は、察知している。
しかも警察署員にとって、もっとも頭を痛める目の上のこぶ・・・・・・・・・・・・・・・。



「松岡・・・・ですね?」
勘の鋭い光一である。静かに、重い口を開いた。
叔父は、何もいえぬまま、数秒ほどたつと携帯は切れてしまっていた。

「やはり・・・あいつだったのかぁ!!!」
光一は、端正な顔を曇らせて、頭を掻き毟った。


翌日、光一は単身、叔父の待つ警察へ向かった。光一にとって、この行動は、周囲が思うほど特別なことではなかった。
幼いときには両親と一緒に叔父の仕事場見学をさせてもらったこともあるし、ここでも叔父の同僚から光一は、可愛がられていた。


待ちかねていた様子の叔父は早速、光一を係長室へと招き入れた。
硬いソファ。重たい空気が漂う中、二人の話はついていた。
黒幕が判明した以上は、奴を追い詰めるまで。
しかし。リスクが大きいことも承知だった。
これは「大スクープ」に飢えたマスコミにとって、格好の餌となる由々しき問題となることは、火を見るより明らか。



もはや、この事態は光一個人の問題というわけには、いかなくなっていた。






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