ZAN   ~斬~      ★SHINE★

堂本家の家系は確かに信長に通じていた。しかし俺の家の場合は直系ではなく、あくまで信長に寵愛を受けた武家として忠実に、仕えていたという。
そうすると、堂本くんの、ご先祖さまが信長の家臣となれば俺の先祖もニアミスしていたかもしれない。
信長から、伝家の宝刀である「龍神念動波剣」を代々受け継いできた。
一度だけ、長瀬が俺の自室にずかずかとあがりこんできたときがあった。
俺の部屋の床の間に整然と置かれていた剣に、かなり好奇心の目を向けていたのがびしびし伝わってくる。
「おう!光一よぉ!この剣・・・・本物か?」
「代々、家に伝わる剣だよ・・・。伝家の宝刀ってやつかな?」
「で・・・でん・・・・なんなんだ?それは?」
俺は長瀬に分りやすく伝えるために「伝家のほうとう」と書いてやると・・・。
「でんやのほうとう・・かぁ・・・。あ!おでんやの、ほうとう!!うんうん!上手そうだな!なるほど、この剣は、上手そうに見える剣の達人みたいだということを言いたいんだな」
・・・・・。長瀬にしては上出来なことを考えたものだ。でも、全く違うし!!
俺は、こいつなら一生、騙し通せる!!という確信がもてた。




僕・・・屋良はボスから過酷過ぎる運命を知る唯一のメンバー。なぜ、親友同然の長瀬さんじゃないのか?とボスに聞くと、一言「あいつは、熱い男だから・・・・」と言って目尻を下げた。
この話をボスから聞いたのは、いつもの歌舞伎町の酒場。
人が多い分、何を喋っているか聞き取れないし、もはや自分が何を喋っているかも分らない酔っ払いたちに聞かれる心配もない。それに、ボスはここの店長とは「堂本老人介護施設」の理事長としての長年の付き合いだとも言う。裏の顔なんて知られていなかったのだ。

ボスの父親は現「堂本老人介護施設」を一代で築き上げた地域でも有名な人格者であったという。施設に隣接した自宅は、それはそれは小さく、ウサギ小屋かと見まがうほどだったという。親子三人、慎ましい生活をしていた。
ボスは一人っ子であった。施設のお年寄りからは、アイドルとして引っ張りだこだった。
そんな楽しい生活も長くは続かなかった。次第に経営が苦しくなりつつあり、銀行も貸し渋りという事態が起こってしまっている。
ボスが中学に入学したときである。バブルがはじけた・・・・・・・。
両親が金策に走り回るなか、そういう施設の危機的状況は入居者の目にも明らかで、当然施設を出て行く、入居者が増えた。
「いっそ、売ってしまいましょう」という母親に父親は決して頷かなかったという。
父親は、決心した。
ボスは、そんな中でも長男として、ここ「堂本老人介護施設」は自分も守る!と誓って高校進学を決めた。バイトをして奨学金で推薦までもらって入学。本来、ボスの学力なら、もっと上のレベルの進学校に進めたはずだし先生にも、説得されたらしい。
しかし、福祉専門の大学を目指すからと断ったそうだ。
ボスが受験勉強に入っていた、ある秋の日だった。
父親が、忽然と姿を消してしまった。あんなに責任感の強かった親父が施設を残して、いなくなるとは考えられず母と一緒に、それこそ血眼になって探したという。
しかし、消息はとうとう分らないままだった。
大学を無事、卒業して光一は資金作りの為のバイトをかけもちしていた。
実は、この酒場でボスはバイトに入り、かなり世話になったという。
そんな生活をして、街はいつのまにかクリスマスシーズン一色に染まっていることに気づいた。
店の仕事を終えたボスは、ふと街外れの公園に自然に目をやった。
そして、一瞬・・・・・・「?!」もういちど目を凝らす。まさか・・・。
ボスは走った。そして息を切らして、叫んだ。
「親父!!!」
ボロボロの作業服姿の背中は明らかに大好きだった親父の大きな背中だ。
もう一度「おやじぃーーーーー!!!!」ボスは叫んで、駆け寄った。
ゆっくり振り返ったホームレスは「こういち?光一なのか?」と立ちすくんだ。
ボスは、滝のように、こぼれおちる涙を拭おうともせずに父親にずっと、しがみついていた。
街は色とりどりのクリスマスカラーで華やぎ、二人をそっと祝福しているかのように・・・・。

また親子水入らずの生活がはじまった。
父親が帰ってくるなり母親に土下座して詫びて、一通の通帳をそっと母親に渡した。
畳の上に置かれた通帳を、そっと開くと母親は驚きのあまり絶句した。
その様子を見て、ボスが母の手から通帳をとると「!?」
あまりの桁の多さにこの僕も、腰を抜かすところだった。
この僕だって、どんなに仕事を3つも4つも増やしたところで、到底稼ぐことの出来ない金額。
瞬時にやばい金であることは理解できた。
ボスも父親に聞こうとした。でも、父親は絶対、口を割ることはないだろう。
ただ一言、「この金で施設を運営する!!再建するんだ!!」とだけ。
幸せな日々って、どうして長くは続かないのだろう。
両親は、その日もいつものように買い物に車で出かけていった。
ボスも、何気に二人を見送りながら施設の掃除を始めた。
今は、施設に新しい入居者も増えはじめてきたところだった。
経費節減の為になんとか親子三人で施設を運営していた。

そしてボスの下に一本の電話が入った。叔父からだ。
両親が車で事故にあったというのだ。ちょうど叔父はパトカーで施設までボスを迎えに来てくれて、そのまま近くの病院に向かうこととなった。
ボスは集中治療室を探した。しかし叔父はあらぬ方向へと行ってしまうので「なんでや?」と思って着いた場所が「霊安室」
遺体は目も当てられない状態だったという。どちらが父で母なのか?
ボスは、目の前の事態を冷静に見ていたわけではなかったという。
夢をみているとしか、やはり思えなかったらしい。
叔父は、しばらく遺体の損傷を刑事の目から見ていて「光一・・・・これは、かなりヤバイことに巻き込まれそうだぞ・・・」と言ったそうだ。





「この世の天下は俺のもの・・・・なのに、なんだ?この敗北感は?」
俺の名は、山下智久・・・・。山下グループのトップとして君臨している。

堂本光一・・・・俺がこの男の存在を知ったのは俺の父親が半年前に肺がんで死んじまったとき。
今、俺が鎮座する社長室のデスクの引き出しの奥から出てきた一冊の手帳だった。
俺の、父親は苦労人で、大学にも通うことが出来ず、ほとんど裸一貫で不動産を立ち上げたという。しかし、そう簡単に仕事がうまくゆくはずがなかった。
父親は悪友の勧めでヤクの密売に手を染めた。みるみるうちにあぶく銭が入ってくる。
その資金を元手に不動産も軌道にのせていった。そして、不動産で土地ころがしをしていく中でヤミ金にも手を染めていったのだという。
そんな父親には、気になる存在がいた。こっちの世界では「鬼の堂本」と恐れられるヤミ金業界では、かなり、やり手の男だという。鬼の堂本は、その名のごとく金の取立てが鬼のように半端なく恐ろしいというのだが、なぜか年寄りには優しいという。だから、年寄りの債務者からは逆に「仏の堂本」と親しまれていた。
そんな堂本の存在は、父親にとっては当然、面白くはない。
しばらくして部下に、こっちの裏の仕事が堂本に勘づかれたらしいという情報が入るや否や父親は堂本を消すことにした。
そして時を同じくして奴・・・・光一の父親も身を隠すためにホームレスとして、あらゆる土地を点々とする生活を始めた。




「マーチン・・・・」
俺が呼ぶと隣の部屋から、すっと現れた青年。
にこっと主人に微笑みかけると「どうなさいましたか?」と尋ねる。
マーチンと呼ばれた、その男は髪の毛の色こそ今風にちょっと染めてはいるが生粋のジャパニーズ。
俺が奴につけた愛称だ・・・・。マーチンは、天涯孤独だったという。両親の素性さえ知れない。
そんな中で、世の中に放り出されたというのだ。俺は、そんなマーチンの絵空事のような話が面白くて、周りの意見も聞かずに彼を俺の秘書兼ボディガードに抜擢した。
俺は、マーチンに例の「ガサ入れ」の全貌を聞くために、警察に確認をとるよう動いてくれと依頼した。
「了解しました」オレンジの香りというのかな?柑橘系の香りを漂わせながらマーチンは俺の部屋を後にした。
そして、数分も立たないうちに「毎度有難うございます!米花生花店です!」と爽やかに入ってきた男。
俺は、「いつも、ありがとう」と言うと、パソコンに目を落として自分の社長としての仕事を始めた。
米花は、鉢植ひとつひとつの状態を見て、栄養剤を注入したり丁寧に仕事をしていった。



米花が、さっき、社長室に入る前に、すれ違った男がハンカチをポケットから出した瞬間、ボタンの様なものを落とした。
米花は、拾って彼に差し出す瞬間、あるものと、それをすり替えた。とマーチンは「ありがとう」とだけ言って、エレベーターホールめがけて足早に去ってゆく。
米花が、何事もなかったように「社長室」に入っていった。
米花とすれ違ったマーチンは、ただのボタンを手に、ぎゅっと握り締めた。
「もう少しです・・・ボス・・・」心の中で、何度も呟いていた。

この記事へのコメント

2006年12月11日 20:53
だんだん核心にせまってきましたね?親の因果が子に報い、闇の世界で生きることになろうとは…。なるほどマーチンは二重スパイっぽいんだね?
山下トップはおそらく、マーチンから堂本一族の情報をも仕入れてるはずだから。ソロコンでのマーチンのワイルドな風貌が目に浮かびます。
セクシーだったわー、ソロコンでのポニーテール@マーチン…♪
愛戦士桜
2006年12月11日 22:24
おおーー!
マーチン、そうなのね(ってRainのコメント読んでうなずく桜)爆
山下くん「クロサギ」なイメージかなぁ~ちょっとステキ☆(浮気じゃないからーーーー!)ドキドキするね!
モモ
2006年12月11日 22:35
とうとう光一さま、そして叔父さまの過去が分かりましたね!光一さまと山下氏はかなりの因縁の中なんですね…。そしてマーチン!気になりますね~!!光一さまの運命はこれから先どうなってしまうのでしょうか?過去の幸せな思い出を胸に、因縁の敵への仇討ちのためだけに生きていくのでしょうか?それはあまりにも切ないような…。やっぱり光一さまには微笑んでいて欲しいと思ってしまいます…。もう一人の「堂本」、剛くんとの出会いによって、光一さまに変化が起こってくれるといいのですが…。って!闇社会はそんな生温い世界じゃないですよね(^_^;)
SHINE
2006年12月11日 22:59
>Rainちゃん
はい!さすが鋭いですねぇ。マーチンは二重スパイです。
なかなか読めない動きをします・・・。敵を欺くなら・・・という世界です。そうですね?山下くんは大体のことは光一のしていることは把握してるし一族のことも知ってます。
ただ、ブレインはマーチン一人。山下は彼以外に心を開かない。
というか開いているかということさえ気づいてないかもしれません。
マーチンは心理戦をしかけます!どう?セクシーだと思いません?(笑)
SHINE
2006年12月11日 23:05
>愛戦士桜
山下くんは直接的に光一の憎悪の的ではありませんでした。しかし、身内が起こした事件をなぜ、事故として処理されたのか?彼は叔父とともに立証しようとします。そこに新人刑事の剛くんも関わってくれます。
彼の頭脳も素晴らしいのです!←書いてる私はアホなのに!!(泣)
ついていけるかしら?ラストまで・・・。
SHINE
2006年12月11日 23:09
>モモちゃん
うん。光一は、仇討ちを違う角度で捉えていました。殺生することだけが目的だったら、ただの殺人です。光一は賢いので、どうにか乗り越えてほしいし山下くんの心も癒してほしい。
マーチンも剛くんも絡んでくるうちに、ある光が見えてくるのです。
さて、事務所のメンバーも、そろそろ本領を発揮しますよん♪

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