ZAN ~斬~     ★SHINE★

「あ~ぁ・・・このボラの連中、光一さんがいなくなると、すぐ悪ふざけ始めるから困るんだけどなぁ・・・」心の中で、ぼやくと、またジャガイモを切り始める。
中丸くんと上田くんは頑張ってくれてるみたいだからいいけど、亀梨くんと田中くんは、すぐ喧嘩になっちゃうし・・・。
ここ堂本老人介護施設の唯一の職員・田口の悩みは尽きない。



程なくして光一は事務所に付きチャイムを鳴らさずズカズカと事務所に侵入。

「おらぁーー!ガサ入れだぁーー!覚悟しとけよぉおおお!!!!」
がらーーーぁんとした事務所は、いつもの騒がしさとまったく違う趣をもっている。
「そっかぁ・・・皆、パクられちまったかぁ・・・・遅かった・・・」
そうして口元にフッと笑みをたたえると、いきなり今度はメンバー全員の名前を呼び始めた。
「なぁがせぇ~っっ!」「チビぃーーー!」「米ちゅわぁーーーん!!」
おかしいなぁ・・・みんな、いないなぁ・・・ぶつぶつ小声で言いながら、どかっとソファに座った。
すると・・・ガタガタガタッとロッカーが揺れ始めた。
そして、そこから出てきた一人の男・・・・。
「ちょっと待ってくださいよーーーー!なんで俺を忘れてるんですかぁ!酷いじゃないですかぁ」
「お前・・・誰だっけ?」ボスに言われて、秋山は、ほとんど涙目になっていた。
他のメンバーも、嬉々として、あっちから、こっちから出てきた。
「もう解決したみたいですね?ボス!!」屋良が言うと光一は笑顔で頷いて彼の頭をぐいらぐいらと撫でた。嬉しそうに屋良は「痛いじゃないですかぁ!ボスぅ♪」と言って、光一の顔をまじまじと見つめると「うん!お前が、それ以上大きくならないように呪いをかけたの♪」
うひゃひゃひゃひゃ・・・と笑いが飛び出すと、ふと、米花が、誰かもう一人いないことに気づいた。
がちゃ・・・長瀬がトイレから出てきて、やっとオールメンバーが揃った。
「随分、長かったね?」光一に突っ込まれ、「おおおよ!ビッグビジネスしてたからよぉおお!」
「????」光一は何を言ってるんだ?という顔をしていると、すかさず秋山が「ボス・・・・・それは○○このことですよ?大仕事だからということに引っ掛けて・・・・」
すると、光一は「秋山・・・・顔がビッグビジネスだ・・・」と言い放った。
長瀬は腹を抱えて笑うし屋良も米花もひぃひい笑った。

ガサ入れの件は、光一の叔父に手を回して貰うことで落着したということをメンバーに伝えた。
メンバーにとってボスの叔父が刑事というのは周知の事実である。
米花にとっても、警察と内通していることは一番、仕事がやりやすいし、叔父には闇社会の情報を事あるごとに伝え情報交換をしている。
そして光一は居心地のいいソファから、ゆっくり立ち上がり「社長室」へと歩いてゆき、ドアに堂々と書かれた黒マジックペン(太)の落書きを指差した。
長瀬は「やべぇ!」と言いながら、「あぁ・・・ぁれはなぁ・・・俺が、ちょっと遊び心?っていうの?そんな感じで書いたんだよ・・・」
「・・・・・長瀬?いつから断りもなく、社長になったんだ?ましてや、その偽社長が会社の金を使い込みしてたなんてな?」
光一に全て見抜かれたと分ると長瀬は即刻、尻尾を巻いて逃げる体勢に入った。
すかさず、屋良は、「あーーー!やっぱり犯人は長瀬だったんですねぇ!秋山!撃ってしまえ!長瀬の大嫌いな注射より痛い麻酔銃!!!」
秋山はすかさず、ソファの中にひそませた銃を取り出した。
米花は、玄関をガードして逃げ道をふさいだ。
光一は、ゆっくりと長瀬に向かって語りかけた。
「そんなに金に困っていたのか?生活苦しかったのか?」
長瀬は、いつにもなく真剣なボスに正直、ちびりそうになるほどの威圧感を感じていた。
ふぅーーーーと大きく息を吐いた光一は「分った。その金は俺が立て替えておくから、屋良・・・後は、頼むなぁ」
「はい!・・・・・でもボス・・・長瀬をこのままにしていて、いいんすか?」
そうだな・・・と少し考えて光一は「じゃぁ、長瀬は一週間、事務所出入り禁止にする!」


長瀬は、実は住むところを持っていなかった。事務所をねぐらとしていたからだ。
だから、居場所を失うことは今の長瀬には死活問題だった。
長瀬がちょろまかした金は300万。すべてスロットですってしまった。

「まぁじでぇーーー!あーーーぁ!!!俺って、なんて馬鹿なんだぁ!!!」

「今頃、分ったの?それに・・・長瀬?出入り禁止は、たったの一週間なんすよ?」
屋良に言われて、ギャーギャーわめいていた男が途端に「え?そうなのか?」
そうと分ると、何を勘違いしたのか、まるで天下を取ったかの様に「ふわっははっははぁ!」と余裕で笑っている。金もないのにどこに泊るのだろう。メンバーは思った。
「じゃぁ。・・・俺は、戻るから。」光一は、メンバーに見送られて、事務所「屋良っしゃい!」を後にした。




施設に戻るとボランティアの中丸が迎えてくれた。
「中丸君、ご苦労様」中丸は綺麗な理事長に憧れていたので、頬を少し桃色に染めながら、「理事長、お帰りなさい」と言いながら、下駄履きからスリッパをそっと、床においた。
「ありがとう」光一は、そういって微笑むと自室に戻った。
光一の自室というのは、施設と隣接してあり、廊下で繋がっていた。
彼の自室に入ることは職員の田口でさえも許されていない。
もちろん、そんな光一の裏の顔を知る者は、ここの施設にはいない。
光一は、楽な格好に着替えた。ロレックスの時計の針は午後4時・・・・。
急がないと・・・・・光一は、お年寄りの待つ部屋に移動した。
台所ではボランティアの学生が、なれない手つきで50人分のお年寄りの食事を作っていてくれた。男の料理だけに、野菜の切り方だけ注意してもらって、あとは嚥下困難なお年寄り用の離乳食などを作ってもらっていた。
突然「おい!田中ぁ!さっきから何、つまみ食いしてんだよーー!」
亀梨が思わず大声を上げたので光一は台所をひょっこり覗いて見た。
「これはねぇ?もぐもぐつまみ食いじゃなくて毒見なの」
おいしそうに揚ったからあげをほおばる田中の様子を見て、光一は、何事もなかったようにして
「皆!お疲れさまでした!これから盛り付けしてから、後は皆で食事にしてな!」

配膳は、早めに弁当をかっこんだ亀梨くんと中丸くんに任せて、田口と俺と上田くん、それと介護サービスの派遣を頼み3人のおばさんとともに寝たきりの方の体位変換を始めた。
光一は、こんな毎日が好きだ。お年寄りと接することで、なんで、こっちの方がパワーをもらえるんやろ・・・。
施設のスタッフルームでは、夜になってもボランティアが残っていてくれる。
こんな古い建物のどこが気に入ったのか「何かが出そうだから・・・」と田中くんが言うと、中丸くんが「おい!失礼だろ!不謹慎だ!」と怒った。
彼らは、4年生で実習生として来てくれているので大学に提出するレポートを書いているのだ。
俺と田口は明日のスケジュールの確認をしていた。
「ところで来週、ちょっと用事があるので夕方には帰るから。」そういうと田口はぷーっとほっぺを膨らませた。
「どうした?あ!そうだよなぁ・・・ごめん!休みが欲しいんだよな?」
「違います・・・・・休みなんて取れるわけないじゃないですかぁ!!」
光一が、そうか?と自分が座っていたパイプ椅子を田口に寄せると、どうしたんだ?と聞いてみた。こしょこしょと俺の耳元に何事かを訴えてきた。なんてことはない。ボランティアのこと。
「ふぅん・・・・そんなことか?」
憮然としてぎしぎしと田口がパイプ椅子を揺らすのを見た光一は、彼に秘策を教えた。



俺が留守番を田口に頼むと、田口はなんとなく、誇らしげにガッツポーズを見せた。
「なんとか・・あの、やんちゃ坊主たちをまとめることに成功したみたいだな?」
ふっと笑うと俺は、ちょっと離れたところの住宅街のガレージに止めてある愛車に乗り、叔父の待つM署へとエンジンをふかした。愛車はフェラーリ・・・・「老人介護施設」の仮にも理事長の俺が高級外車に乗ってかっ飛ばしてるなんて噂が立って見なさい!!
俺には、いくつも秘密がある・・・・。でも、一番、自慢したいのに出来ない愛車の存在が我ながら哀れだ・・・・。
M署に到着すると、叔父が出迎えていてくれた。
「係長室」・・・・なんて普通あるはずないと思うのだけど叔父の場合は特別だった。
「この間の、ガサ入れ・・・・助かりました。」
お互いソファに腰掛けると、いつもの会議に入った。
俺には、憎むべき敵がいる。・・・・そう・・・・敵だ。
それも、かなりヤバイ奴で、最近、世間を騒がしている事件の大半は、そこが源流になっている。表向きは優良企業を謳っているし最近では福祉関連の企業まで着手したというではないか。実は、それが怖いと思って、ここに来たのだ。
そんな話をしながら、ふっと俺は大事なことを思い出した。
「そういえば、この間の刑事さん・・・・堂本さん。どうしてます?この間の一件で、ろくに話もできひんかって・・・」
叔父が、にっこり微笑むと「やっぱり、気になるか?」と言って立ち上がり別室へと消えていった。

「失礼しまぁす♪」叔父の横にいたのは間違いなく、あのときに慰問に来てくれた刑事さんだった。ネタがばればれの手品を披露してくれて、お年寄りの皆さんは、それでも物珍しそうに彼を見ていた。
そんな彼の演目を見ていたときの秋山からの一報だった。
あの時の非礼をわびると、「そんな!理事長さんは、お忙しいでしょうから気にしてません」と手を自分の顔の前で、横にぶんぶん振っている。
そんな二人を見て、何気にさっきから嬉しそうにしている叔父が気になった。
「ところでね?堂本君・・・。光一は実は俺にとっては甥っ子なんだよ。」
光一は、内心ですこし驚いたが平静に、うんうん♪と頷いていた。
「ほえーーー!そうなんすかぁ!なんで早めに仰ってくださらないんですかぁ!?」
「君が聞いてこないからだよ・・・ほっほほぉーー」
警察署なのに、なんて和やかなんだ・・・と俺は思った。
俺が、叔父と話をするというのは警察のヤマを追う事もあるのだが叔父には俺の計り知れないところで何かを企んでいるらしい。事実、ここに「堂本剛」さんという刑事がいる。

これから彼に何を語るつもりなんだ・・・・・・・。
事件のヤマは、表面上、俺とは関係ない。確信に迫れば、また違うのだけど。
俺と彼の共通項はこの「堂本」という苗字だけ・・・。
「まさか・・・・・?」叔父はあの昔話をするつもりか?頼む!それだけは、やめてくれ!
昔話と言っても、俺の・・・ではなく俺のご先祖様の話だ。
でもでも・・・・・それが堂本くんと、どういう関係があるというのか?
俺の先祖は代々、武家だった。かなりの上流階級の武士だったという。
ね?くだらないでしょ?だから、言ったこっちゃない・・・・・。

「そういえば、俺、織田信長の家臣の子孫だったんすよー!」

「おえぇーーーーーーー!!」いきなりの、素直すぎる彼の発言に俺は思わずソファから転げ落ちた。

この記事へのコメント

2006年12月10日 16:26
あー。まだ光一ボスの謎が見えない。何を抱えて、何をどうするために今、日々を生きているのか?うーむ、引っ張りますな~♪
モモ
2006年12月10日 23:14
「顔がビッグビジネス」面白すぎです♪
ボランティアのゆかいな仲間くんたちは、もちろんお年寄りや施設も好きだと思うんですけど、やっぱり一番は光一さまの人柄に惚れてるんですよね♪なんとなく分かります!施設は、そこを任されている人のオーラとか、雰囲気とか…上手くいえませんが、そういったものがリアルにあらわれる場所のような気がします!堂本老人介護施設も光一さまの微笑みのように、優しくあたたかいんでしょうね♪うん。やっぱりここでボラしたいです!!←まだ言うかっ(笑)
光一さまの過去もなぞですが、叔父さまもかな~りなぞの多い方なんですね\(◎o◎)/!ふたりの関係も気になります!!
SHINE
2006年12月11日 00:17
>Rainちゃん
そうですねぇ・・・。いくら何を血迷ったか無理くり短篇と決めていたので、長文にてエピソードを詰め込むしかなくて。しかも早い段階で光一の辛い過去を書いてしまうと先入観だけで見られてしまうことを避けたかったのです。仇討ちの話なのですが、そこには仲間との絆、お年寄りとの絆身内との絆を描きたいと思ったの。
だから謎の部分は引っ張らせてもらってましたが、明日にですね?
とうとう光一の知られざる過去が更新されますので、またヨロシクです★
あと、お待たせしましたぁ!いよいよ町田くんも登場です(>ー<)V
SHINE
2006年12月11日 00:24
>モモちゃん
「ビッグビジネス」ツボでしたか?良かったです♪
さて叔父さんはですねぇ・・・私の中でも謎の人なんです・・・実は。
何をしでかすか分らない・・・。長瀬タイプの方ですよね?
彼の思考回路は光一でさえも読めない!ということは、とても心強い人。ただ敵に回したら、かなりの強敵になるところでした。
叔父さんと光一のタッグに絡むのは剛くんです。
この3人が組んだら・・・・末恐ろしいです。
私も、光一くんの施設で働きたいけど、多分、仕事にならないだろうなぁ・・・。動機が不純ですからねぇ・・・。(爆)
愛戦士桜
2006年12月11日 12:09
ほんとにいろんな顔を持っているのね 光一さまは☆^^
事務所での凛々しい社長の顔。施設での優しい理事長の顔。
そして・・・あーなんだかゾクゾクする~☆(カゼか)爆
SHINE
2006年12月11日 12:42
>愛戦士桜ちゃん
あ~ノロウィルスが流行っていますから気をつけてぇ!!
光一は本当に色々な顔を持っています。物語が佳境に入ると、ますます!
桜?ゾクゾク通り越して凍り付いてしまわないようにね?
メンバーたちの死闘もあるし・・・・。
楽しみにしていてね?

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